「けど、お前に声を掛けたのはそうだとしても、俺は――――」
「……っ」
矢沢君から放たれる言葉をこれ以上聞くのが怖かった。正直に話すと言ってくれた矢沢君にきちんと答えなきゃと決めたのはあたしだ。
けれど、このまま矢沢君の言葉を聞いていると、あたしの中の何かが壊れていくような気がしたのだ。
「…っもう、聞きたくないよ…」
「心、」
「矢沢君が正直に話してくれたのは凄く嬉しかったよ……けど、もう無理だよ」
「おい」
心臓が痛くて痛くて、どうにかなってしまいそうなんだ。心の整理が追いつかない。
「……あたし、今日は帰るね」
「待てって、心」
あたしがその場に立ち上がった瞬間ガッと腕を掴まれてしまい、そのあまりにも強い力にあたしは少し顔を歪めた。
「痛いよ、…離して」
「俺の話はまだ終わってない」
「…あたしはもう何も聞きたくないの」
真剣な顔でそう言ってくる矢沢君にあたしは無理やり手を振りほどき、矢沢君の部屋を飛び出した。
――――その時、「心!」とあたしの名前を呼ぶ矢沢君の声がハッキリと聞こえたけれど、あたしはそんなのお構いなしにさっさと矢沢君のマンションを後にした。