「……お前が気になってる事、全部話すから、ちゃんと聞けよ」

「………、うん」

不意に小さな声でそう言ってくれた矢沢君に、あたしも大人しくコクンと頷く。
そんなあたしに苦笑いを浮かべた矢沢君は、そっとあたしの目を見て静かに口を開いた。


「………お前、自分が絢と似てるとか、身代わりだったとか、そんな事言ってたろ」

「……うん」

心臓がさっきとは比べものにならないくらいドキドキする。無理をして言えば、心臓が破裂するのも目の前ですと言った感じだ。


「……確かに俺は絢が好きで中学の時付き合ってた。それも初めての女だったし年上だったけど、そんな事関係なかった。……アイツが離れて行くまでは、俺もちゃんと本気の恋愛をしてた」

「………、矢沢君」

そう言って顔を歪ませる矢沢君を見て、あたしはどうしようもなく胸がズキンと痛んだ。

痛くて苦しくて、それがただの嫉妬なのか、矢沢君に対してなのかは分からないけれど、……それでも、物凄く胸が苦しくなる事にはこれっぽっちの嘘もなかった。