「最近の矢沢君、ますますおっかなくなったよね」
最近、クラスや学年でそのような言葉をよく耳にするようになった。
そんな声があたしの耳に入って来たのもつい数日前の事。
色々な矢沢君の話題を耳にする度、あたしの心臓が大きくドクンと跳ね上がってしまう。
「…………」
矢沢君に本音を全部ぶちまけたあの日以来、あたしは矢沢君と口を利く事はおろか、顔を合わすことすらしていない。
正直、そんな状況に立ち止まったまま、あたしは何も出来ないでいる。
「……はあ」
無意識のうちに、溜め息が漏れる。
「ちょっと、さっきから溜め息ばっかりつかないでよ。こっちまで気が重くなるじゃないの」
「ああ、ごめん」
目の前に腰掛ける由希にそう指摘され、あたしは小さな苦笑いを一つ零す。
今日これで、何回目の溜め息なんだろうか。