「………」

ちょっと怖いどころか、大分怖い。
派手な金髪と口に咥えている煙草、それに私服だって乱れ放題だ。

あたしが恐る恐るこの場を立ち去ろうとすると、不意に「ねえ」と声を掛けられた。

「君、良く見ると可愛いねー。今から帰るの?」

「……え、」

そんな事を言われ、あたしは一瞬ピシリと体が固まってしまう。

「ええっと、その…、」

「ぶつかった事は別に怒ってないし、…どう?これからちょっとお茶しない?」

「…………」

何と言う男だろう。いきなり見知らないあたしをお茶に誘って来た。とてもじゃないけど、受け入れられる訳がない。

「…………えっと、御遠慮しておきます」

あたしが小声になりながらもそう言うと、目の前の金髪男は眉間にギュッと皺を寄せた。

「…………」

どうして、そんな不満そうな顔をされないといけないのだろうか。

「本当にちょっとだけだから。もちろん、奢るよ?」

「……いえ、真っ直ぐ家に帰るんで…」

あたしがそう言うと、目の前の金髪男はいかにも不機嫌そうな顔をする。

何でこんな事になっているんだろうか、ただ人とぶつかってしまっただけだと言うのに。

「あのー、あたし、ホントに急いでるんで」

上手く交わそうと思い駆け足でこの場を逃げようとすると、不意にガシっと意図も簡単に腕を掴まれてしまった。

「おっと、逃げないでよ」