「顔真っ赤」

「う、うるさい…っ」

あたしにチラリと目を向けてそう言う矢沢君にちょっぴり反論すると、矢沢君は何故か嬉しそうに頬を緩めていた。あたしはそんな矢沢君に少しだけドキンと心臓が脈打つ。

「………」

時々積極的な行動を見せてくる矢沢君に、あたしは当然の如くお手上げ状態だ。

それでも、ギュッと繋がれた右手はそっと握り返してしまう馬鹿なあたし。

少し積極的になる矢沢君にはちょっぴり困るけれど、それでもあたしに触れてくれる矢沢君の行動は、とてつもなく嬉しい。


「ちょっと、寄り道しないか」

「え…?」

いきなりそう言った矢沢君にあたしが首を傾げると、矢沢君は少し照れくさそうにそっと口を開いた。

「最近、此処の近くにお前が好きそうなカフェが出来たんだよ」

「…………!」

そんな矢沢君の言葉に、あたしはちょっぴりドキリとする。

「別に、行かないなら良いけど」

「え。あ、……い、行くっ、丁度小腹も空いてたんだ」

「…、そうか」

矢沢君はあたしに短くそれだけを返すと、不意に口角を緩めて小さく笑った。