「―――心、帰るぞ」
「あ。矢沢君……」
いきなり開いた教室の扉から姿を現したのは当然の如く矢沢君で、あたしはそんな矢沢君の姿についふわりと笑みが零れてしまった。
「ああ。彼氏さんのお出ましねー。じゃああたしもそろそろ部活行こうかなあ」
「………由希」
「じゃあまた明日ね!心。そんじゃね」
「あ、うん!部活頑張ってね」
由希は笑顔でブンブンと此方に手を振ると、駆け足で部活へと向かって行ってしまった。
あたしはそんな由希を見えなくなるまで見送って、隣に居る矢沢君へそっと目を向けた。
「お前、さっきすげぇ興奮してたみたいだけど、何話してたんだよ」
「えっ!?」
「声、丸聞こえだったぞ」
不意にそう言ってあたしを見下ろす矢沢君と必然的に目が合ってしまい、あたしはそんな矢沢君の言葉についカアっと顔の温度が熱くなってしまった。由希が急にあんな事言うから。
「………いや、何でもないよ。あたしと矢沢君の事少し聞かれただけだから」
「ふーん。変な事言ってないだろうな」
「い、言ってないよ!そもそも、矢沢君との間に変な事なんて何もないでしょ?」
「まあ、それもそうだけど」