「ねぇ、まさかねー、心がね。ほんとびっくりよ」
「もう、うるさいなあ」
放課後の教室であたしの目の前に座る由希は、ニヤニヤと口角を持ち上げながら嫌らしい笑みをあたしに向けた。
「まさか、心が矢沢君を好きになるなんてねー?」
「………も、もう良いでしょ!今朝からしつこいよっ」
「ええー。だって気になるじゃなーい。ずっと嫌がってたくせに。久瀬先輩に片想いしてたくせにー」
「……うっ」
今日の今朝、いつも矢沢君の事で心配してくれたり背中を押してくれた由希に、もう矢沢君の事で心配してくれなくても良いよと言ったら、挙句の果てにこうなってしまった。
色々と聞いてきたり、話を掘り返して来たり、ずっと口角を持ち上げてニヤニヤと笑ってくる。
ああ。矢沢君、早く教室まで迎えに来てくれないだろうか。