「じゃあまたな」

「………っ」

矢沢君は小さな声でそう言うと、不意にポンポンとあたしの頭を撫でて来た。

そんな唐突な行動にあたしが顔を真っ赤に染めていると、矢沢君はまた小さく笑って、来た道をスタスタと帰って行ってしまった。

あたしはそんな矢沢君の後ろ姿を、見えなくなるまでずっと見送った。



――――けど。……まさか、この時。





「――――…心、誰だよその男、」




―――あたしの後ろで誰かが、私達のやり取りを見ていただなんて、矢沢君しか見えていなかったあたしには、到底気付けるわけもなかった。