それからも、脈アリだ脈アリだと散々言って来る由希にあたしは何度も否定をして、昼休みはあっという間に幕を閉じた。

その日の放課後、今日も部活へと行ってしまった由希に、あたしはブンブンと手を振って、そそくさと帰る準備をし始めた。


「あたしも早く帰ろう」

次々と教室を出て行くクラスメイトに目を向けつつ、あたしもさっさと帰り仕度を済ませ学校を後にした。

「はあ…」

最近止まる事を知らない溜め息を一つ吐き捨て、トボトボとした歩調で駅へと向かう。


――――そう言えば、この前までは帰り道には矢沢君が隣に居たなあと、不意にそんな事を思いだした。

「…………」

矢沢君と毎日一緒に居るようになって、それがさも当たり前のようになったのは一体いつからだっただろう。

知らない間に長い時間一緒に居て、矢沢君と一緒に笑っていた。

素っ気ない矢沢君が笑う事はまずないけれど、それでも小さく向けてくれる笑顔に、あたしは不覚にもドキドキしていたんだと思う。