「何か聞きたそうな顔ですね」

「え、いや……」


あたしそんなに顔に出てた?

隠すように頬を抑える。


「見た目だけで寄ってくる人はたくさんいました。
それで好きでもない女の人と一度だけ付き合ったんです」


そんな事あったんだ…

全然知らなかった。

夏目君はモテるから、そういうのは絶対ないとは言い切れないかもしれないけど…


「その人を"好き"になる事はありませんでした」

「……」


何て、言葉を返せばいいのか分からなくて、終始無言でいたあたし。

空気が重い気はしたが、そこまで気にはしなかった。


右側にいる夏目君が、いつもより元気がなく見えて少し不安になる。

だけど、そんな彼に何て言葉をかけてやればいいのか分からない。


「みんな俺の外見ばかりで寄ってきて中身なんてちっとも見てはくれていないんですよね」


苦笑いを初めて見た。

頬が少しだけ引きつっていて、無理矢理笑っているんだろうって…