歩くペースだって、もっと早く歩けるはずなのにあたしに合わせてくれてる。


さり気なく車道側を歩いてくれる。


話題が尽きないように、たくさんの話題を提供してくれる。


ちゃんと、分かってるから。

夏目君なりの気遣いなんだって事。


ちゃんと、伝わってるから。

夏目君の強い気持ちを。



「俺、初恋なんです」

「え?初恋?」

「はい。俺自身が相手を好きになったのは怜先輩が初めてです」


………っ。

ストレートにくるなぁ。

聞いてるこっちが恥ずかしいよ…



「初めて…?」

「今まで本気に人を好きになった事がないんですよね」


意外というか、驚き。

こんなに人気者の夏目君が、人を本気で好きになった事がないなんて……


"本気"で好きになった事はないのなら、"偽り"ならあるって事?