月島先輩は表に出さなくても、三年前の事件で傷ついているはず。

綾さんだってそう。

また、同じことが起こってしまったら、二人の距離はさらに遠くなってしまう。

私がいなければ、本当は一緒にいた二人なのに。

もう、月島先輩に悲しい思いをさせないでよ。


今、思えば、初めて月島先輩の家に行った帰り道、変な人たちに絡まれた時も、小谷さん達に呼び出された時も“手”を使わずに、私を助けてくれた。

ピアニストだったんだもん―…

大事な手だよね?

そして、今でも、大事な手なんだよね?


三年前、大事なコンテスト直前にも関わらず、むしろそれを狙って月島先輩の将来をダメにしたあの人なら、本当にまた何をするのかわからない。

また、月島先輩の手も心も傷つけてしまうような気がしてならないよ―…


それに、お遊びとはいえ、明日にはライブだって控えてる。

これ以上、月島先輩から音楽を遠ざけないで―…


そんな想いと共に、そっと、ポケットに忍ばせているガラスの小瓶を握る。