「―…だな」


「え?」


「本番、明日だな」


「そ、そうです……ねっ」


ついつい物思いにふけってしまっていて、月島先輩の言葉に慌てておかしな返事をしてしまう。


「―…」


そんな私を月島先輩が、じっと見る。


「どうかしました―…か?」


「いや、最近更にお前が可愛く見えて」


「へっ!?」


いきなり月島先輩がそんな事を言うものだから、さっきよりももっと変な声を出してしまう。

私があたふたしていると、


「海音、手」


月島先輩がいつものように私に手を差し伸べてくれる。

月島先輩の手をとると、甘酸っぱい気持ちが広がる。

一瞬、一瞬の幸せな時間を胸に留めておきたい。

今日は、もう余計な事は考えずに、ただ月島先輩の側にいたい。

そう、思った時だった。


「響―…!!」


月島先輩を呼ぶ大きな声で振り向くと、芹沢先輩が息をきらして立っていた。