「わたし……」


私が綾さんに、そんな言葉を言ってもらう資格なんてないのに。


「今日はお話出来て良かったです」


「は、はい……」


「失礼します」


「はい……」


ベンチを立ち、歩いていく綾さん。

その後ろ姿はとても悲しそう。

違うのに。綾さん、違うの。

何度も心の中で思うけど、口に出しては言えない。

今すぐに月島先輩から離れる勇気なんてない私。

もう少し月島先輩の彼女としての思い出が欲しいから、本当の事なんて言えない。


よく、お伽噺には王子様とお姫様の邪魔をする魔女が出てくる。

魔女は―…


「私―…」


そう私なんだ。