そのジャケットはとてもシンプルなデザインでアーティストの顔写真は載っていなかったけれども、さすがに鈍感な私もその文字を見て気付かずにはいられない。

月島先輩のCDだ。


「私、先輩達のこと説明したときに言わなかったけ~?」


そう、いーちゃんに言われると、


〝今でも有名人なんだけど、ちょっと前は本当の意味で有名人だったの”


そんな言葉を思い出した。

その続きは確か、いーちゃんに電話が入って聞けなかったんだ。


「これって―…クラシック?」


おそるおそる、いーちゃんの手からCDをとってジャケットの裏を見てみる。

〝ラフマニノフ”

〝ベートーヴェン”

〝シューベルト”

私でも知っている著名な作曲家達の名前が綴られている。


「あ……ショパン」


その中には、音楽室で月島先輩が弾いていたショパンの―…


「雨だれ……」


〝雨だれ”もあった。