翌日の朝。

家を出る前に何度も鏡を覗く。寝癖がないか、制服の皺がないか―…

慣れないメイクも、ほんの少しだけしてみた。

ダテ眼鏡はいらない。せっかくのウェーブも一つに結んだりなんかしない。

そんな私を見てパパは、


「海音、この間言っていた事と話が違わないか」


と不服そうだったけど、


「パパ、私ね、もっと自分に自信を持ちたいの。だから、お願い」


解って、と訴えると、それ以上は何も言わずに会社へ出勤してしまった。

だって、また前の私に戻ってしまったら、何も変われない気がしてパパに解って欲しかった。

時計を見ると、ちょうど針が7時半を指そうとしている。

慌てて玄関に向かって、ドアを開ける前に大きくひとつ深呼吸。


〝今までのことが―…夢ではありませんように”


そう思って玄関を開けた瞬間、月島先輩の背中を見つける。

何だか、とても幸せな気持ちになった。