不思議な男だった。

彼という存在が、本当かどうかも確かめる術も無い。

彼の言っている事が真実かどうかも、俺たちには確かめようが無い。


俺たちは彼に興味を示し、
うろ覚えだという彼の記憶から情報を引き出した。

そんな毎日が暫くは続くのだと思っていた。


ユピテルは『疲れた』と言って、子供たちが帰宅する時間より前に、俺の部屋で休んでいた。

あえて会わせもせず、
「お客さんが来ているから良い子にしてろよ?」と、
彼の存在は曖昧にした。


寝る時間が来ると、
俺は彼の寝顔を確認してから、すぐ隣りに寝床を作った。

静かに眠る彼の顔は、
俺たちと何ら変わらなかった。


時代に取り残された、
ただの住民なんだろうか?

普通の青年だろう…

知っている奴もなく、
独りで心細いだろうなぁ…


そんな事を考えていた事は覚えているが、俺も普段とは違う1日に疲れていたのか、すぐに眠りについてしまった。



夢を見た。

いつもと同じ、
真っ白な何も無い世界で。

ただ、
声だけが聞こえていた。