俺は自分でも想像を膨らませながら、じぃさんに通訳を繰り返し会話を成り立たせていた。


『蝶々は闇の季節が苦手でしたから、闇の季節が来る度に大移動をして星の反対側へ…』

「星の、反対側?」

『えぇ。この星は今も、光と闇を繰り返すでしょう?こちら側に闇の季節が訪れている期間は、裏側は光の季節ですね?蝶々は光を追って大地を自由に移動するのです。』

あぁ、なるほど…。

俺までもがユピテルの話に真剣に耳を傾け、納得する様に頷いていた。


俺たちはカロリスの水場から外へ出る事が無い。
つまり、
星の反対側の姿を知らない。

カロリスは窪んだ大地。
周囲を高い岩壁が囲い込み、その絶壁を登る事は不可能。

もしかしたら、
その絶壁の上に拡がる星の反対側には、豊かな大地が未だ存在しているのかもしれない。


「…蝶々か…。自由に飛び回れる蝶々なら、絶壁の向こうを見る事が出来るんだな…」

俺たちは叶いもしない空想にふけり、午後の穏やかな時間を過ごしていた。