その手紙の封筒には『奏へ』と綺麗に書かれていた。 まだ手紙は読めていない。100%先輩からだと分かっていたから。 先輩が死んでから涙は流してなんかない。 逆になぜ出てこなかったかもわからないほど潤みもしなかった。 でもその手紙には涙が落ちた後が残っていた。きっと、先輩のものだと思う。