「里中、里中」

後ろから呼ばれる。

「無視するなよ」

なんて言われても振り向かない。

「里中ってば」

ああ、もう!!

『なによ』

「やっとこっち見た」

怒っている私に無邪気な子供のように笑う彼。

田中くんといると心が壊されていく。

「一緒に帰ろ」

そんな誘いに乗らない。

『一人で帰れば』

これぐらい突き放さないと彼は諦めてくれない。

「いいんだ?ばらすよ?俺」

『最低』

「仕方ないだろ、そこまでして手に入れたい人なんだから」

こんなこと言われたのはじめて。

でもときめかないのはきっと私が彼を好きじゃないから。

『…わかった。でも今日だけだから』

「帰ろ」

先に歩く彼をみて心が痛くなった。

まるで叶わないのに先生を追いかけてる私を見ているみたいで。

彼と私はどこか似ているのだろう。