それから2週間ほどして、クレアはある日登校途中でめまいを起こした。


「あれ、どうしたんだろう・・・世界がまわっていく・・・あ、しゃがまないとまずい・・・」


「君、しっかりしなさい。いかんな・・・貧血か?
大学の医務室がいちばん近いか。」


クレアが目を覚ますと、大学の医務室のベッドで寝ていた。

「ここは・・・?」


「やあ、目が覚めたね。
ここは君が通っている大学の医務室のベッドだよ。

僕はスレダ・ウォーグル医大の学生なんだけど、君は妊娠してるね。」


「えっ!?」


「うちの家族がね、代々産婦人科をしているんで、僕もそっちをいちおう目指しているんだけど、気になったんでちょっと検査させてもらってさ。

ところで、君のご家族は君が妊娠してもいい環境なのかな?」


「えっと・・・私は両親はもう亡くなってしまっていないんです。
それで・・・お・・」


「相手の人には冷静に言える?」


「あの・・・どういう?」


「だからその・・・生まれちゃいけない子とかね。」


「なっ・・・何言ってるんですか?
私はこれでも既婚者ですっ!

両親はいませんが、保護者で夫ならいます。
だから・・・ご心配いりません。

あっ・・・でも・・・。」



「ご、ごめん。ぱっと見た感じ指輪もしてないようだったから・・・でもよく見りゃ、痕はあるね。」


「すみませんが、家まで送ってもらえませんでしょうか。
ご都合が悪かったら、代わりの人でもいいですので。」


「何かありそうだね。どうしたんだい?
まぁ、これも何かの縁だし、デリケートな勉強のうちだから僕にできることだったらつきあいましょう。」


クレアはゼイルとまだぎくしゃくしていることをスレダに話した。

「ふむ・・・彼は僕と同じ年齢なんだね。
それで、実業家かぁ。やるねぇ。

話の感じじゃ、けっこう俺様タイプなのかな?
けっこうプライドが何かと許さないかもしれないねぇ。

でも・・・いい趣味だな。」


「えっ・・・?」


「いや、こっちの話。
よし、そしたらその子は僕と君の子どもってことにしようか。」


「だ、だめですよ。そんなことしたら余計に話がややこしくなっちゃうし、だいたいスレダさんと初めて会ったのにどうやってこの子ができちゃうんですか。」


「だから、養護実習でやってきてた・・・とかね。」


「無理ですよ。そんなの。」


「理由は何でもいいんだよ。彼はどんな理由も見えないと思うからさ。」


「どうして見えないんですか?」


「ん?見えないと思うんだ・・・僕が予想するにだけどね。」