ゼイルは冷静に言葉をつづけた。


「いずれ会社役員にエリーゼさんの名前が並べば、娘さんが相続することになるだろう・・・。
忘れようと思っても愛憎のもつれとはなかなか忘れられないもの。

結末はもうわかっていると思うけど・・・。
俺もまた最初からその買収の件では調べなおしてわかったことなんだ。

クアントから引き継いだことだったが、俺自身にもいろいろ飛び火してきたとなっては黙っていられないからね。

弟さんの妻の妹・・・とんだ食わせものの女だった。
家庭を壊すだけではなく、弟の会社からいろんなものを取っていった張本人と結託していた。

それだけでは飽き足らず、表向きは姉の不幸をしょい込んだ形をとりながら、俺に恨みをぶつけるように、交換条件を出してきた。

家族みんなの不幸を償えといいながら、俺にキスしてきてわざとクレアに見せ、買収予定だった金を要求してきた。

もちろん、そんなものには応じられないけどね。」



「で、どうなったの・・・?」


「事情を調べなおして、こっちにもそういうときの力強い味方がいるんでね・・・逆に被害届を出して今頃は警察に連れて行かれている。

恐喝だの偽証だの殺人以外のいろんな罪が出てきそうだな。」


「なんか、とんでもない事件がかかわっていたのね。
私が怒った事実って小さなことすぎて、なんかばかみたい・・・。」


「そんなことないよ。
君が怒って出ていかなかったら、俺は事件を早く洗いだすことができなかったんだから。
それにエリーゼさんの存在だって、知ることができただろ。」


「うん。エリーゼさん・・・お父様がさびしくなかったのはエリーゼさんと話せたからだと思います。
よかったらときどき、こうやってお墓参りのときにでも私とお話してください。」


「クレア・・・さん。ありがとうございます。
何といっていいか・・・私・・・。
ありがとう。」


エリーゼは何度も2人に頭をさげると、捕まった弟の妻の妹に会ってくるといいその場を後にした。



「なぁ、クレア・・・これで俺の罪もはれたんじゃないかと思うんだけど・・・。」


「甘いわね。目の前であんなの見せつけておいてよく言うわ。
私がお嬢様のクレアだったらこれでもう許したかもしれないけど・・・許さないわ。
事実、あなたはキスされっぱなしだったんだから。フン!」


「お、おい・・・。まいったな・・・いつのまにあんなにたくましくなったんだ?」