翌朝、食堂へ行くと会社の秘書が慌ててやってきていた。


「あ、おはようございます。ご無沙汰しています。」


「うわっ!いいところに!!もどってらしたんですね。」


クレアはきょとんとした顔をしていたので、秘書は事情を説明し始めた。


「じつは昨日、食品業界のトップでもあり、ホテル業でもかの有名なダリアム・ウォルソン氏から重要なパーティーのお誘いを受けたんです。

それはいいんですけど、そのパーティーには女性同伴でないとまずいんです。」


「会社に女性ならたくさんいるんじゃないですか。」



「そりゃ、女性はいっぱいいますけど、社長と並んでなおかつそんな高級なパーティーなんて、うちは今まで受けたことはありません。

小さな冷凍、冷蔵商社ですもの。
なんかダリアム氏にうちの社長が気に入られちゃったみたいで。」


「いいじゃない。そんな大物に気に入られたら。」


「それが・・・ダリアム氏はかなりお節介やきで有名な人みたいで、同伴する女性がいない男性をみると世話をしたがるらしいの。

それで、社長も・・・今週はずっと候補リストをつきつけられてたみたいなんです。
だから、昨日も不機嫌で・・・。」


「不機嫌?・・・それで・・・なの?」


「何がですか?それより、クレア様がもどってらしたのなら簡単ですわ、パーティーに出席してダリアム様に挨拶なさってください。」


「ちょ、ちょっと待って。
だって、私は会社にはぜんぜん・・・業務のことも何にも知らないし・・・。」


「知らなくてもいいんですよ。
同伴女性ですから、適当にお話できたらそれでね・・・。

まぁ、必要リスト程度ならクレア様なら簡単に頭に入るでしょうし、適任ですよ。」


「わ、私・・・そんなパーティー用の服とか靴とかぜんぜん持っていませんし。」



「俺がすべて用意するよ。
もし、君がきてくれるというならね。

もちろん、その分の給料も払おう。」



「ゼイル・・・昨日はこの話も?」


「いや、話はするつもりはなかったんだけど・・・アテもなくてね。」


「だって外に出れば寄ってくる女性なんて、けっこういるんじゃ?」


「悪いけど、俺は兄さんとは違うんでね。
愛想はあまりよくない・・・わかってると思うけど。」



「私でお役にたつなら、お手伝いくらいするわ。
そもそもパパの会社なんだし・・・。」


「よし、じゃ、早速買い物から始めようか。」


「えっ?だって・・・今日はゼイルは仕事なんじゃ?」


「これも仕事だ。重要任務を引き受けてもらったんだから。」


「あ。・・・ゼイル・・・」