父親からきいた話もあって、コンパをやるとは言いだせなかったクレアだったがゼイルの店には親近感をおぼえていた。

そして、学校の帰り道に現地集合ってことで喫茶店へとやってきた。


「え~と・・・華麗戸?かれいど・・・枯れ井戸?そんな名前よね。
あった!ここだわ。」


入ってみると雰囲気が少しレトロっぽく木の匂いがする感じの店だった。

もう学校の仲間たちは集まって、外が見える席に座っていた。


クレアも仲間のいる席へと向かい、座ると聞き覚えのある声がした。



「いらっしゃいませ。予約のお客様は全員揃いましたか?
ご注文も承りますよ。」


「えっ・・・・!!誰よ、あんた?」


「誰って毎日顔をあわせているじゃありませんか。
ゼイルでございますが、何か?」


「だって・・・口調がいつもと違うし、なんか丁寧で怖いよ。
何かたくらんでるの?」


「いいえ、ここでコンパをすればいいと提案したのは私ですし、私はもともとここではこういう仕事をしておりますから。」


「なんか・・・変!
まあ、いつもと違うんだから協力してよねってことで。
さてと・・・あちらのグループってきたみたい。」


コンパの相手はどうやら医大の大学生たちだった。


クレアたちは頭のいい男たちに釘付け状態だった。


数人と話すうちに2人ずつ店をあとにして出かけていくのがわかった。


クレアも・・・と思って振り返ったら、とうとう誰もいなくなっていた。



「どうして?私ひとりだけなの。
みんなどこへいっちゃったの?」



クレアが沈んでコーヒーをすすっていると、ゼイルが声をかけてきた。

「さてと・・・そろそろ家に帰りますか?」



「ねぇ、みんなどこへ行ったの?
私だけどうして誘われなかったの?
私は嫌われる容姿なのかしら・・・。」


「嫌われる容姿などではないでしょう。
ただ、ちょっと家柄とか格式ばるのが嫌だっただけじゃないですか?
さぁ、私もそろそろあがりますので、もどりましょう。」


「ええ。・・・あっ・・・ねぇ、どうしてそんな丁寧口調なの?
いつも執事のときは上から目線で横柄な口のきき方してるのに。」



「しっ、接客業のときはよそ行きのしゃべり方になるだけですよ。」


「ずっと接客してるままの方がいいのに。」


「そうはいきません。それだとストレスがたまるのでね。」