3日後、ロイのところにリックから連絡が入った。


リックの伯母の家にクレアが身を寄せているということだった。

リックの伯母は夫を亡くしてから息子夫婦と折り合いが悪く、使用人3人を雇って暮らしていたが、クレアがきて話し相手になってから、気性もおだやかになったという話で、リックは心配はいらないからということだった。



「おい、動物園のクマじゃあるまいし、そんなに目の前をウロウロするなよ。
クレアお嬢さんは無事だったんだから、安心じゃないか。」


「しかし・・・リックの親族は出入り自由なんだろ?
そしたら、あいつが・・・アベルだって来ているかもしれない。」


ロイの店の事務所でゼイルは文句を言い続けていた。


「もとはといえばおまえの発言からだろ。
すっかり嫌われているんだから、そろそろもうあきらめてもいいんじゃないか?
あんまりしつこいと、ストーカーだと言われるぞ。」


「わかってるさ、けど・・・心配なんだ。
リックの伯母さんに好かれるのはいいんだが、クレアはあまりにも男に免疫がないんだから。
もしかして、パーティー好きの伯母さんでいろんな男に会う機会を増やされたりしたら、どうしたらいいんだぁ!」


「おい、人口の約半分が男性なんだからな。
あまりに過保護というか、不自然だろ。
それに彼女のことを思うなら、1度や2度の失敗があってもだな・・・。」


「失敗・・・そんなのダメだ。
彼女のことを真剣に考えてくれる誠実な人物でないと!

べつに俺じゃダメだといわれれば仕方がないけれど、それでもせめて彼女を泣かせるような男はダメだ。」


「マジ保護者だなぁ。でもまぁ、離れて暮らしてみるのもいいかもしれないな。
傍に居過ぎているのも見えるものも見えなくなるってことがあるかもしれないからな。」



それから2日後、クレアが大学で使う資料やテキストなどを家に取りに来たことがわかったが、ゼイルは仕事中で会うことはなかった。


クレアは大学に通いながら、リックの店でアルバイトをして、夜はリックの伯母のメアリー・ルアド・マルランの話し相手をしながら暮らしていた。



「さて、今日も仕事、仕事!!」


「ほぉ、今日は一段とはりきってるじゃないか。
勉強ははかどっているのかい?」


「ええ、今日で試験が終わったの。だから、がんばろうって気分も盛り上がってるのよ。」


「なるほどね。じゃ、今日は忙しくなるけどがんばってもらおうかな。」