翌日、アベルは華麗戸に来ていた。

そして、オフィスでロイと話をしていた。


「へぇ、クレアがおたくの看板娘だって?」


「そうです。とても助かっていますし、売上げにとても貢献してもらっています。」


「あの、少しお尋ねしますが、クレアの保護者があなたの弟さんのゼイルさんですよね。
ゼイルさんはクレアさんのお父さんの会社を継いで社長に就任されて、家にもいつもおられるんですか?

同じ家に独身の男女が住んでいるってよくないと思いませんか?」


「はぁ、なるほど・・・それでここまでいらしたんですね。
まぁ、男女の中ですし、父親が亡くなってそのあとをうちの弟が継いだ。

ビジネス上の取り決めみたいなものは、いろいろ弟からききましたが、あの邸は他にも使用人がたくさん住んでいますから、2人きりではありません。

それにお嬢さまには保護者は絶対に必要です。
それはあなたもわかりますよね。」


「え、ええ。女性ひとりというのはいけません。」


「なら、弟が保護者でいいんじゃないですかね。
まぁ、あなたがお嬢様に正式にプロポーズでもして、それをお嬢様が承諾して結婚するとなれば別でしょうけどね。」


「そ、そうですね。まだそういうのは先の話です。

わかりました。弟さんと同棲してるんじゃないことがわかればいいんです。
では、お忙しいところ失礼いたしました。
今後とも、うちの兄貴ともよろしくお願いいたします。」



アベルが帰る姿を見ながらロイは少し笑っていた。

「あいつにはライバルくらいいなきゃ、ダメだからなぁ。
家や会社を継いだことが財産狙いだとまだ言うやつらもいるし、あいつの本心を知る者なんていないだろう。

いちばん知ってほしいのはクレアお嬢様だけど・・・かわいそうなやつだからなぁ。」



しばらくして、ゼイルもロイを訪ねてきた。


「俺はどうしたらいいんだ・・・。
せっかく自分の気持ちをクレアに伝えたのに、嫌われてしまった。ううっ!」


「おい、嫌われてるのは今までからずっとだろ。
おまえは知識はけっこうあるんだが、たまにそれをひけらかすところがあるからなぁ。

お嬢様に向かって君より仕事ができるやつにやらせろとか何とか言ったんじゃないか?」


「え・・・兄さん、見てたのか?」


「やっぱりそうなのか。あのなぁ・・・お嬢様はお嬢様でなければできないことがあるんだ。
それをできないヤツ扱いするのは、だめだろ。」



「そうなんだよ・・・俺は雑用係をやる必要はないって言いたかったんだけど・・・つい・・・。
それに、最近、クレアはリックの喫茶店を手伝っているんだ。
それはかまわないんだけど、弟のアベルってヤツがクレアに馴れ馴れしくてさ。

しかもクレアと同じ大学の先生ときている。
そんな学校行かなくていいのに。」


「そうはいかないだろう・・・まったく、おまえは。」