「ムリムリムリ! 毎日一緒になんて緊張して心臓破裂しそうだし! それに何より……このガサツな自分を隠しておけそうにない」



樋田先輩は同じ中学で、その頃のあることがきっかけでずっと憧れていた人。

この高校を選んだのも、実は彼を追ってきてしまったせいでもある。

メイクをしたり、女らしくしようと意識し始めたのも、彼に少しでも女として見てもらいたいから。

こんな乙女心を知っているのは、唯一この舞花だけだ。


先輩に近付きたい気持ちはあるけど、そうしたら絶対にボロが出る。

スカート履いてるの忘れて足広げちゃったりとか、試合で相手にケンカ売っちゃったりしたら、間違いなく幻滅される!

その図を想像して顔をしかめていると、舞花がぷっと吹き出した。



「縁って、本当はすごく乙女だよね」

「はっ? どこが乙女に見えるの、コンタクト曇ってんじゃない?」

「ふふふ、そうやって恥ずかしがるとことか。超可愛い♪」

「か、可愛いとか言わないで。痒くなる!」



腕を掻きながら、赤くなっているだろう顔で茶化すあたしだけど、もちろん可愛いと言われるのは嬉しい。

先輩にもそう思ってもらえたらいいんだけどな……。

ていうかその前に、部活どうしよう……。