上履きに履き替えると、また那央と合流。

その間にもうチャイムは鳴っていて、同じ二階に向かって階段を駆け上った。

階段のすぐそばにある1組の教室では、もう先生が来ているようなのに那央は焦った様子がない。



「なんか余裕だね」

「俺の場合、ちょっとくらいの遅刻なら免除されるから」

「え、なんで?」



教室の後ろの戸の前で足を止め、背の高い那央を見上げると、彼は手を上げて薄く微笑む。



「んじゃ。またな、縁」

「ちょっ……」



一方的に話を終わらせたマイペースな那央は、ためらいなくガラッと戸を開けて中へ入っていく。

廊下に取り残されたあたしに聞こえてきたのは、先生と那央の会話。



「遅いぞ、片霧」

「すんません。一番チビの妹がうんこ漏らしてオムツ換えてたんで」

「おーそうだったか。ご苦労さん」



免除されるって、大家族ってことをうまく言い訳に使ってるだけじゃん!

先生、本当に納得しちゃってるし!

教室で沸き起こる笑いに背中を押されるように、私も失笑しながら自分のクラスへ向かった。