那央の家から学校までは自転車で10分くらいだった。

でも、最後の上り坂が二人乗りではさすがにキツい。

歯を食いしばってペダルを漕ぐ那央に笑いながら、ひらりと飛び降りたあたしは、彼と競争するように坂を走った。

別に楽しいことなんて何もしていないし、しかも周りには誰もいなく、今にもチャイムが鳴りそうな状態。

それなのに、何故だか顔がほころぶのを抑えられなくて、あたし達は笑い合いながら自転車置き場へと向かうのだった。



「あー朝からいい運動した!」

「わりぃな、走らせて」

「いーよ。走るのは嫌いじゃないから」



背伸びをするあたしに、自転車を停めた那央がバッグを渡してくれた。

そして足早に下駄箱を目指しながら話し続ける。



「何か部活やってんの?」

「ううん。全員参加なんてことになったらしいから今考え中。そっちは?」

「俺は……まーやってるけど、たいした部じゃないから」

「なにそれ」



よく意味がわからなくて聞き返したかったけど、下駄箱に着いたのでとりあえず話は中断。

那央は1組らしく、7組のあたしとは端と端。だから同学年なのにお互いの存在に気付かなかったのかも。