……しょうがない。

まぁ、この人が自転車漕いでくれるなら、あたしはラク出来るんだし……ラッキーだと思うことにしよう!

そう無理やり自分に言い聞かせ、おしとやかな座り方なんて頭にないあたしは普通によっこいしょと跨がる。

そんなあたしを見た彼は、その時に初めてふっと笑顔を見せた。

そして、自分の腰の方へとあたしの手を引っ張る。



「ぎゃ! セクハラ!」

「あ、そーいうこと言う? まぁ別に嫌ならいいよ。バッグだけ運んでやるからお前は走ってきな」

「ぅぐ……!」



何でコイツが主導権握ってんの? このチャリはあたしのなのに!

理不尽だと思いつつ何も言い返せないでいると、ヤツは悪戯っぽく口角を上げ、しっかりとあたしの手を腰に巻き付けた。

彼を抱きしめるような体制に、戸惑いと緊張で心臓が悲鳴を上げる。



「手を離すなよ」

「……安全運転してよね」

「任せろ」



そう言うとさっそくペダルを漕ぎ出し、あたしも彼のブレザーをギュッと握りしめた。