「な、何言ってんの!? 貸せるわけないでしょ!」

「大丈夫、俺だけ乗ってこうとか思ってないから。はいはい、下りて」



謎の男子はカゴに彼のバッグも入れ、強引にあたしを自転車から引き剥がす。そして自分がサドルに跨がってしまった。

なになに!? 何なのコイツ!?

唖然とするあたしに顔を向けた彼は、顎で後ろを示す。



「後ろ乗りな。早くしないと遅刻するぞ」

「えぇぇ!?」



二ケツしろってこと? こんな見ず知らずの人と!?

到底受け入れられるわけがない!

あぁでも、いつまでもこんなことしてたら確実に遅刻だし……と、ぐるぐる考えていたあたしは。

突然手首をぐっと掴まれ、彼の方に引き寄せられた。



「ひゃっ……!」

「ほら早く」



ぐんと縮まった距離に心臓がドキンと跳ねる。

こ、この人……よく見るとすごくイケメン。

目鼻立ちがハッキリしていて、中性的だけど男らしいっていうか……とにかく綺麗な顔をした男子だ。


こんな人をこんな間近で見たことなんてない。

なんだか身体の力が抜けたあたしは、彼に誘導されるようにふらふらと後ろに移動した。