「お前ら早くしろ! 俺も遅刻しそうなんだよ!」



そんな声が聞こえ、驚いたあたしは思わずブレーキを掛けてしまった。

な、なに!?

声がした方を見やると、ものすごく年季の入った一軒家の前で、同じ高校の制服を着た男子が立っている。

何やら玄関の方に向かって叫んでいたようだけど……おぉ!?


その玄関からは、中学の制服を着た子やランドセルを背負った子がぞろぞろと出てきた。

一人、二人……四人!? え、あの男子校生を入れれば五人兄弟!?

こんなところに大家族が住んでいたのね……。


あたしは遅刻しそうなことも忘れて、彼らの様子を興味深く眺めていた。



「よーし、皆いるな。行ってこい」

「「兄ちゃん、いってきまーす!」」

「「バイバーイ!」」

「おぅ、気をつけろよ」



バタバタと走っていく子供達に手を振った最年長らしき彼は、くるりとあたしの方を向いて走り出す。

げっ、こっち来る!

はっとしてすぐさま自転車のペダルに足を掛けたものの、彼とバッチリ目が合ってしまった。

そしてあたしに駆け寄り、こんなことを口にする。



「お、ラッキー。ちょっとチャリ貸して」

「っ、はぁ!?」



いきなり何を言い出すか!