次の日、少女が教室で授業を受けていると、後ろの席からひそひそと話す声が聞こえてきた。

 授業中に私語なんて、不真面目な生徒もいるものだと少女があきれていると、「窓の外」という単語が耳に入ってきた。

 それで窓の外に目をやると、そこには昨日会った少年がいた。
 少女と目が合ったことに気付き、少年は笑顔で手を振る。
 少女は思わず声をあげて、席から立ち上がってしまった。

 ありえない。ここは三階なのだ。
 しかも、窓の外にはベランダなどはない。ただのガラス窓だ。
 そんなところにどうやって張り付いていられるというのだろう。

「どうした? 質問か?」

 黒板の前の教師が少女に声をかけた。
 少女は赤面して慌てて椅子に座る。

「い、いえ、なんでもありません。授業続けてください」

 ありえない。ありえない。何あの男子……。
 頭おかしいんじゃないの!? そんな怒りにも似た思いが少女の脳裏をかけめぐっていた。
 そして、残りの授業は全く頭に入って来なくなったのだった。