「危なかったね、雄也……て、あれ?」
 
雄也の姿が見当たらない。が、何やら下でモゾモゾ動いている。
 
「あのー……重いんですけど……」
 
ありさは窓から降りた時、床に着地してしゃがんでいた雄也の背中に乗っかり、そのまま背中に座ってしまっていたようだ。
 
「あっ、ごめん!!」
 
「……ったく、背中が痛いよ」
 
雄也から降りたありさは周りを見渡した。
 
「……暗いね。うっすらなら周りが見えるけど……」
 
周りには昔、使われていたと思われる商品棚が並んでいた。前にここに遊びに来た子供もいたのか、所々にガラクタのような物も見えた。いや、もしかしたら店主のこどもかもしれない。そんなことは今はどうでもいいのだが、とにかく雄也は背中を払いながら言った。
 
「意外と狭いんだな、ここ。ちょっと見てまわろっか?」
 
「そだね……」
 
「手……」
 
「……?」
 
「暗いから、手繋がないと離れちまうだろ……?」 
 
「あっ……う、うん……」
 
ありさがまた顔を逸らしたが、今はそんなことを考える暇はなかった。とにかく現状確認が先決。2人はスーパー内を見てまわった。特に変わった所はなく、意外と短時間―たったの2、3分―で見てまわる事ができた。
 
「うーん……事件と関係のあるような物は何にもなかったなぁ。」 
 
「うん、そうだね……」
 
「はぁ……とりあえず戻ろうか。」
 
「うん……」
 
ありさは少しがっかりした。もう少しこうしてもいいんじゃないか、むしろこうしていたい。そんな気持ちがあった。だが雄也は期待外れだったこのスーパーを後にしようともと来た窓の方に向かって歩き始めた。
ガサッ
後ろで音がした。何かがビニール製のものの上に落ちる音だった。