「……ところでお前さん、ここに何の対処を施さずここまで来たのかの?」

老人に話しかけられて上体を起こすヴォルト。ちょうど長座のような格好だ。

「あ、はい。ジェントさんと別れてから真っすぐここを目指していましたから。それが何か……?」

「それは……これを着なさい。」

それは麻か何かで出来た上着だった。こんな暑いところで上着なんて着たら尚更暑くなる。それが普通なのだが。

「……え?」

「驚いたじゃろ?それはヒルムガードという魔法をかけてある上着なんじゃ。」

「へぇー。これはスゴいや、全然暑くないや。」

「それを着ていないとあの山の内部では焼け死んでしまうぞ。灰さえも残らない、灼熱地獄じゃ。」

老人は顎をしゃくるでフィアルドマウンテンの山頂部分(ちょうど赤い光が出ていたところ)を指した。