「さすがパレットナンバー1の勇者じゃな。」

そう言うと老人はヴォルトの横にある岩に腰掛けた。見た目には合わないスピードで。

「なぜ……僕のことが分かったんですか?」

ヴォルトの台詞には焦りが見えた。こんな老人に色が付いていることも含め、今のヴォルトには一杯一杯であったのだ。

「ふむ……その前にじゃ。お主はこの世界の伝説を知っておるかの?」

ヴォルトは首を横に力なく振った。

「なら話してやろう。」

老人は言った。七色の、虹の色をした勇者が狭間の世界に舞い降りること。“色の雫”を集める旅を始めること。勇者はもといた世界の影響を受けること。特にパレットナンバー1の勇者は。“色の雫”がある場所には強力な色獣が住んでいること。すっかり聞き入っていたヴォルトは、今まで全く自分は狭間の世界を全く知らないまま1つ目の“色の雫”に向かっていたことを知り、恐れた。また今の自分では色獣に勝つことはおろか、その場所にたどり着くことさえ出来ないことを知った。

「以上じゃ。」

老人の話は長くもなく短くもなく、老人自身の言いたいことを的確についている。そういう風にヴォルトに届いた。