「俺は女には優しく接してない。学校じゃ冷酷王子だなんて呼ばれてる」
「あぁ!うちのクラスの女の子達が話しているのを耳にしたことがあります。でも、それはあくまでも噂ですよね?だって、律先輩はこんなにも優しいんですから、冷酷王子様だなんてありえません!」
「いや…そんなに断言されても、事実だから…」
「私にとっては律先輩はとても優しい人です」
そう断言した柚姫の表情は、穏やかで真剣なものであり、律はそれ以上訂正するのも面倒臭くなり、そのまま何も言わなかった。
それからしばらくの間、2人は無言だった。
しかし、2人の間に流れる空気感は決して重たいものではなく、寧ろ無言でいても心地よかった。
律は、花菜やあかねと過ごす時とは違う何かを感じているようであったが、それが何なのか答えを見つけられずにいた。