「律先輩こんにちは」
「あぁ、柚。遅かったな」
「ちょっと廊下で人と話をしていたので…」
「人?」
そう言うと、律は柚姫の手を引っ張り、自分の胸元に引き寄せた。
「……隼大か…」
「えぇっ!?何でわかったんですか?」
先程まで話をしていた相手を律に当てられて、柚姫は驚きを隠せないでいた。
「…匂い」
「匂い…ですか?」
「あぁ。アイツの香水の匂いが密かにしてたから…」
「そうですか?自分じゃよくわからないですけど…」
「隼大の香水は匂いがキツイから、ちょっと一緒に居ただけでも、移ってることがあるんだよ。まぁ、普通の嗅覚ならあんまり気にならないんだろうけど、俺、人より匂いに敏感なんだよね」
「そうなんですね…。だから律先輩は私がさっきまで隼大先輩と一緒に居たって気付いたんですね…」
「あぁ。……それで?隼大と何を話したんだよ」
「えっ?」
「今まで一緒に居たんだろう?まぁ、隼大がここを出て、柚が来るまで5分は掛かってないから、そんなに長時間一緒にいたわけじゃないんだろうけど」
「…隼大先輩が見えたので、挨拶をしたんですが、私が隼大先輩のことをよく知らなかったので驚かれていました」
「あぁ…柚はそういう噂話なんかに惑わされないもんな」
「隼大先輩も有名な方なんですか?」
柚姫の素朴な疑問に、律は柚姫の頭をそっと撫でた。