それから夏休みの間、律と柚姫はほぼ毎日一緒に過ごしていた。
夏休み後半は、柚が上達したこともあって、勉強をしたり、出掛けたりしており、稽古をすることはなかった。
「夏休みも今日で終わっちゃいますね…」
「あぁ…」
「明日から学校だなんて嫌だなぁ~…」
「まぁ、その気持ちはわからないでもないけど…」
「あ…そうだ。律先輩、また第二保健室に遊びに行っても良いですか?」
「あぁ、もちろん」
「良かった。……あっ、もうこんな時間!そろそろ帰らないと」
「本当だ。……時間が経つのは早いな」
「そうですね…」
そう言うと、柚姫は帰り支度を始めた。
もちろん、律は何時ものように、柚姫を駅まで送って行く為に、何時もの格好になった。
「よし、行くか…」
「はい」
そう言うと律は柚姫は手を取り、駅へと向かった。
最初は手を繋ぐことに対して、少し抵抗を示していた柚姫も、今では寧ろ当たり前の行動となっており、習慣化されている今、ごく自然な動作で手を繋ぐようになっていた。
「じゃぁ、律先輩。また明日、学校で」
「…あぁ…」
そう言うと、柚姫は改札口を通って、行ってしまった。
柚姫の後ろ姿を、律は何だかぽっかり心に穴が空いたような気持ちで見つめていた。
それが一体何なのか、律にはわからず、悩んでも答えは出なかった。