「律先輩…」
「ん?」
「本当によかったんですか?洋服で来ちゃって…」
「別に茶室に入るわけじゃないし、いいよ」
「えっ?茶室には行かないんですか?」
「あぁ、言ってなかったっけ?俺の部屋で教えるから」
「律先輩のお部屋ですか?」
「何?不満?」
「いえ、そういうわけじゃないです…」
「そう」
それから律は柚姫を自分の部屋に案内した。
「どうぞ。どうせ今日は誰もいないから、そんなに緊張しなくて大丈夫」
「……誰もいらっしゃらないんですか?」
「あぁ。親父も母さんも今日から一週間は帰ってこない」
「そうなんですか…」
柚姫は律の言葉を聞いて悲しそうな表情をしていた。
「まぁ、昔からそんな感じだし、柚がそんな顔すんな」
「…寂しくないんですか?」
「別にもう慣れた。それに、もう寂しがるような年齢でもないからな…」
「あ、それもそうですよね…」
「ほら、始めるぞ。まずはいつも通りな感じでお茶を点ててみろよ」
「はい」
柚姫は律に言われるまま、お茶を点てた。