「律先輩、どうですか?」

「ん?あぁ…美味しいよ」

「よかった」

「柚姫も食べれば?ほら…」

「ありがとうございます」








律は柚姫にもマフィンを渡した。
マフィンを受け取った柚姫は、律と一緒に隣で食べ始めた。









「柚姫はさ、お菓子作りが好きなの?」

「はい。食べるのも作るのも大好きです」

「へぇー…。じゃぁ、柚。次は何を作ってきてくれるんだ?」

「えっ?」

「柚が作ったお菓子、また食べたい」

「…律先輩、いいんですか?」

「何が?」

「だって…手作りの物に抵抗あるって…」

「あぁ…。そうだったんだけど、柚だけは特別」

「特別?」

「あぁ。柚が作ったお菓子なら何故か食べられるみたいだ」

「………」

「なぁ、柚。たまにで良いから、作ってきてくれないか?」

「律先輩に喜んでもらえるなら、作ってきます」

「ありがとう」








柚姫は戸惑う表情も見せたが、律の頼みを承諾した。
約束を取り付けた律はとても嬉しそうで、冷酷王子の異名を持つ人物と同一の人間とは思えないほど、律の表情は終始笑顔だった。