「柚姫?どうした?」
「律先輩が名前を呼んでくれたのが嬉しくて…」
「名前ならいつでも呼んでやるよ」
「ありがとうございます」
そう言った柚姫の表情は、とても嬉しそうだった。
「それにしても、律先輩は困ってくれる時に助けてくれるヒーローですね」
「ヒーロー?俺が?」
「はい。それに律先輩はとても優しいです」
「………」
「律先輩?」
「前にも言ったけど、俺は優しくない。そんな風に言うのは柚姫と花菜くらいだ」
「花菜?」
「俺の妹」
「妹さんがいるんですね」
「あぁ。柚姫と同じ1年生」
「律先輩の妹さんなら、きっと優しいんだろうなぁ」
「だから、俺は優しくない。冷酷だって言ってるだろう?」
「冷酷な人は助けてくれません。律先輩は優しいし、私のヒーローです」
そう言い切った柚姫の表情は嬉しそうで、律はそれ以上何も言えなくなってしまった。
それからチャイムが鳴り、HRが終わったことを知らせていた。