「ご、ごめんなさい」






 私は頭を下げて言った。



「私、他に好きな人がいるの。…でもありがとう。好きって言ってくれて嬉しかった」



「ちゃんと言ってくれてありがとな」




 木本朱里は、最後まで爽やかに笑っていて、去る姿もどこか清々しかった。


 二度目の恋は、苺綺をおすすめするよ。




 苺綺はすごく可愛くて優しくてお人形さんみたいな子。


 きっと苺綺に恋したら、素敵で幸せな日々が送れると思うよ。



 でも、次の恋は木本朱里が決めるもの。私が「苺綺にすれば?」なんて言えない。




 ちゃんと木本朱里自身が「好き」と思った相手じゃないと、ダメな気がするんだ。




 だから言わない。

 だけど、心の中で思うくらいならいいよね。





 私は、そう思いながら花瓶を持つ力を強め、教室へ向かった。