ふとケーキ屋のカフェスペースを見た。



 瞬間、強い風が私の髪をなびかせた。けれど私は、髪を抑えようともせずにカフェスペースのある席だけをシッと捉えていた。




 あれ…?

 なんだ、この胸に落とされた鉛のようなものは。


 あたし、矢崎のこと好き……なんだよね?



 じゃあどうして?




 ガラスになっている壁から見えるカフェスペースの、壁側の真ん中の席。


 そこに座るのは、見知った顔二人。





 どうして、こんな気持ちになってるんだろう。


 絶対、矢崎のこと好きなはずなのに。



 遥陽より矢崎のこと好きなはずなのに。






 どうして心は、こんなに重いの?辛いの?苦しいの?





 遥陽と結月が、微笑み合ってるところなんて……見たくなかった。


 はっきりとした表情は読み取れないけど、二人とも微笑んでるのはわかる。




 どうして見たくないんだろう。

 それはまだ、――遥陽のことが好きだから?