「―――新川!!」







 聞こえたのは、会いたかった彼の声。


 ……遅いよ、バカ。




 俯いてる顔をゆっくりと上げると、そこには、はぁはぁ…と息を荒くした矢崎がいた。



 髪がピョンと跳ねてて、走ってきてくれたことが一目瞭然。





「遅刻だよ!」



「悪い!寝坊しちまってさ…」




 顔の前で手を合わせ謝る矢崎。



 どんだけ私が心配したと思ってんのよ。あんたが来るまで、ハラハラしてたんだからね。


 ……でもこのことは、言わないでおく。



 だって、それほど矢崎のこと思ってたってことでしょ?そんなの恥ずかしくて、言えないよ。





「今度から一分遅刻するたび100円ね」


「お金とんのかよ!」





 それにね、私、矢崎が無事でここに来てくれただけでいいの。


 会えただけで十分なの。




 だから矢崎。

 私を心配させた分、私を喜ばせてね。