「あっそ。……じゃあ、もう優花に関わんない。困ってたって、さっきみたいに助けてやらねぇから」

「……いいよ。それに、助けてなんて頼んでないもん…」


いつもなら言い返すなんてことはなくて、多分泣いてしまうであろう優花が珍しく俺の目を見て言い返す。


「……勝手にすれば?……もう、いいじゃん。成宮に助けてもらえんだから」


俺も優花にそう言い返すと、さっきまでしゃがんでいた場所にドサッと座り込んだ。


「……もう、ロッジ戻れば?一人にしてくんない?」


優花に背を向けたまま言った。


優花はしばらく俺の後ろにいたかと思うと、何も言わずに走り去って行く足音が聞こえた。


少しづつ遠ざかっていく足音が耳に響く。

その音がもう聞こえなくなってから、俺は下を向いて砂浜の砂を右手で思いっきり握りしめる。


「……なんで俺まで優花とケンカしてんだよ……」


俺から離れてしまった優花は、もう二度と俺のとこに戻ってこない気がした。


血が繋がってないんだから、兄妹以外の関係を望むことは本当に無理なのだろうか。


優花に彼氏が出来れば、忘れる…なんて自分で思ったくせに。

優花が人のものになった今、余計欲しくて欲しくてたまんない。


…なんで、俺じゃダメなの…?


そう訊きたいのに、訊けない。


どうしても、どうやっても、

優花は俺のものにならない。


それがムカつく。


だからって……なんで優花にあたってしまったんだろう。



砂を握りしめている右手に、ポツリと雫が当たった。

少しづつ喉あたりが熱くなっていくことで、自分が泣いていることに気づいた。



「……かっこわるー………」


自分が情けなくて仕方ない。


……でも、もう。

どうやっても、優花は俺のものにはならない。


ムカつく……

ムカつく………

ムカつく…………。



「……ユキ」


浜辺で突っ伏してる俺の背中から、俺の名前を呼ぶ声がした。

振り返らなくても、それは誰の声だかすぐにわかった。