「……優花?」

「……大丈夫……。……あたしは大丈夫だから、構わないで」


背中を向けたまま、優花がそう言った。


その言葉がなんだか無性に寂しそうに聞こえるのは、俺の気のせいだろうか。


確信できないから、俺は気づかない振りをした。

普通に話をすることで、それを誤魔化す。


「……風馬とケンカでもしたの?風馬、なんか怒ってたけど」


立ったままの優花の横にしゃがんで、手持ち無沙汰な俺は、指で砂浜をいじる。


「……風馬から……何か、訊いた?」

「……風馬から何にも訊いてねぇけど、透子と晴からは訊いた。……成宮って奴と付き合ってんだって?」


焦らして遠回しに訊くのは嫌だった。


だから、そのままストレートに訊いた。



「……優花さぁ……何、考えてんの…?」

「…………」


優花の返事がない代わりに、海の波音が優しく耳に響く。

波はこんなにも穏やかなのに、気持ちはそうじゃないことになんだかイライラする。


「……付きまとわれてた奴っしょ?成宮って。俺があの時、さっきみたいに助けたじゃん。……泣きそうになってたくせに、なんで?」

「………変でしょ?あたしって……。成宮くん、凄く変わってたから……いいかなって思っただけ。……あたし、彼氏いないし…夏休みだし…色々遊びたいなーって……」

「………気持ちって、そんなすぐ変わんの?」

「……変わるよー。女の子だもん……恋したいし…」

「……ちゃんと、目見て話せよ」


いい加減イラッとした俺はいつまでもそっぽ向いて話す優花にそう言うと、優花はゆっくり振り返って、俺を見る。


その目は、まだ潤んでいるように見えた。