俺に突然、

『妹』と『弟』ができた。




「おい、ユキ!ヘアワックス貸して。ってか、勝手に借りるけど。」


洗面所で、俺が髪をセットしてると鏡に割り込んできたのは、

一応、『弟』の風馬(ふうま)。

歳は一個下の高校一年生。
一応『弟』のくせに、生意気で、俺のことを『ユキ』と呼び捨てにしやがる。

俺と同じ、サッカー部所属。


「はぁ?また?ってか、お前のここにあるじゃん。」

「…それ、なんかもひとつセット力がない。」


そう言って風馬は、俺のヘアワックスを遠慮ナシに豪快に使う。


マセガキのくせに、一丁前にかっこつけやがって……

そう思いながら、俺の隣にうつる鏡越しの風馬を睨みつける。


すると、鏡の片隅にうつる彼女を見つけた。

少し寝癖が混ざったこげ茶の長い髪に、
大きな欠伸をした彼女に振り返る。


「あ、優花(ゆか)、おはよ。」

「……おはよ〜、ユキちゃん。」


そう寝ぼけ眼で俺の名前を呼んで、小さく微笑んだ優花に、俺の胸はいちいちキュンと音をたてる。