「梶木くーん!」
そう叫んで彼に駆け寄る私は、昨日の分まで取り返す勢いで両手を広げて彼に突進して行く。
が、当然、梶木君の右手でガシッとガードされて胸に飛び込んで匂いを嗅ぐなんて事は出来ないのだが。
「森山さん、元に戻ってうざいね」
私の頭を右手で押してさらっと酷い言葉を吐く梶木くんだが、その顔はいつもより優しくて本気でうざいと思われていないんじゃないのかな?と思ったりする。
「今日は元気なんですよ!」
にこっと微笑めば、呆れた様にはぁっと溜め息を吐かれる。
「ほんと、傍迷惑だよね」
「まあまあ、そう言わさんな」
「言いたくなるよね。森山さん見てると、無性に」
「何で!?」
無性にって、どういう事ですかっ!
梶木君に顔をグッと近付けると、フッと鼻で笑われてしまった。
「森山さんがひたすら馬鹿だからに決まってるでしょ」
出た!梶木節だよ、これ。
ひたすら馬鹿って酷過ぎる!
「馬鹿じゃないってば!毎度言いますが、普通です!」
私は真ん中普通女子なのだ!
梶木君よりは馬鹿だけども。
ふーん。とどうでもよさそうな返事をすると同時に椅子へと腰を下ろす彼。
彼が興味を示す話題って一体どんなものなんだろ?
ぼけっとそんな事を考えながら、いつもの様に床に膝をつき、梶木君の机に頬杖をつく。
そのまま鞄を机の横に掛ける梶木君を見つめる。
と、そこで頭を過る昨日の事。