どれくらいあの場所にいたのかはよく分からない。


ただ、木々の間から夕焼けが見えていたという事は相当長い時間だったのだろう。


森山さんの手が頭を撫でいるのが、凄く心地よくて。


今まで心の奥に鍵を掛けてしまい込んでいたものが、溢れ出たんだろう。



格好悪い。


凄く格好悪い奴だと思う。


森山さんにあんな格好悪い姿を見せた事が恥ずかしい。


でも、……真実を伝えに来たのが森山さんで良かったとも思う。


僕にとっての大切な切っ掛けを作るのは、……癪だけどいつも森山さんなんだ。





ーーーーー……………


ばあちゃんが僕の変わりにトラックにひかれてしまった光景は、思い出したくもない光景だ。


トラックにはねられた瞬間に、空を弧を描いて飛んでいくばあちゃん。


ドンッと大きな音が響いた時にはばあちゃんは、夏祭りで歩行者専用になっていた筈の道路に身を倒していて。


頭からは血が出ていた。


凄い血が出ている訳でも無いのに、ばあちゃんの側に駆け寄って「ばあちゃん!」って何度も呼び掛けても、ばあちゃんはピクリとも動かなかった。


今思うと、頭を強打してしまっていたのだろう。


救急車で病院に運ばれたばあちゃんは、直ぐに緊急手術を受け、命だけはとりとめる事が出来た。


が、その晩。


容態が急変してばあちゃんが亡くなった。



ばあちゃんが亡くなったなんて信じられなかった。


信じたくなかった。


ばあちゃんの事が大好きだったから。それに、自分の変わりにトラックにはねられたと分かっていたから。